西表島(沖縄県)

いるもて荘YHのガーデン


サキシマスオウノキと南風見田浜



バラス島と周辺の水中








西表島へ行く
 西表島を訪れるためには石垣島から船というのが、一般的でしょうな。石垣 島から高速船で50分。けっこう遠いのだ。ちなみに空港はないので、本土・沖 縄本島から直接乗り込むことはできない。
 西表島は、沖縄県で2番目に大きな島であるが、島の中央部はジャングルな ので、一般の旅行者はまず立ち入ることはできない。人が住んでいるのは島の外 周部だけで、人口は石垣島の20分の1以下である。空港を作る土地も需要もない 島なのだろう。また島を一周する道路もないため、観光ポイントを回るのはけっ こう大変だ。バスもあまり走っていないし。観光にはレンタカー・レンタバイク が足となる。レンタサイクルもあるが、大きな島だし、けっこうアップダウンも あるのでお奨めはしないぞ。

西表島に泊まる
 西表島での3泊は、すべて船浦にある「いるもて荘」YHにした。一つの島 の中心地に宿を取り、そこを拠点に動き回るというのが、最近の私の旅行パター ンだ。
 いるもて荘は民宿との併営で、建物も食事内容も同じ。部屋を相部屋にする か、個室にするかといった違いだけのようだ。
 このYHは高台にあり、建物の正面に大きめの芝生の庭がある。パラソルや ガーデンチェア・テーブルなどが置かれ、ちょっとしたリゾート気分を味わえる (しかし蚊が多い)。この庭からは海が見え、バラス島や鳩間島が見渡せる。な かなか気持ちのいい環境だ。 このYHは特色は、ダイビングに力を入れている ことであり、体験ダイビングも格安でできる。
 部屋はこぎれいだ。沖縄の宿にはありがちだが、洗濯機や物干し台がやたら たくさんあるなぁという印象を受けた。
 夕食は、まぁ普通。ミーティングはなかったが、9時頃にパイナップルが出 る、その名も「パイナップルタイム」があった。この時間帯を利用して、同じテ ーブルの人と情報交換をしたり、島縦断のメンバーを募ったりするようだ。また この時間の後、ダイビングに参加する人たちの打ち合わせや、ダイビングライセ ンス取得のための講習がある。
 同じテーブルの人と近くの商店にアイスやら酒やらを買いに行き、その帰り に蛍虫をみた。正式にはイワサキマドホタルという名の蛍の幼虫らしいのだが、 道の端の方々でぼーんやりとした光を放つ。八重山独特の夏の風物だ。

体験ダイビング
 さて体験ダイビングである。ダイビングは飛び込み、という意味でしょうが 、海でのダイビングは、スキューバダイビング、つまり潜りを意味します。
 では「体験」ダイビングとは何か?っていうと、普通、ダイビングというの は資格がいるもんなんですな。資格を得るためには勉強もせなアカンし実習もせ なアカン、つまり時間とお金がかかるんです。一介の旅行者がほいそれとできる ものではないんです。でも旅行者の中には、勉強も実習もイヤやけど潜りたい〜 、シュノーケルで水際をパチャパチャは飽きた〜、という方も多いわけで、そう いう身勝手な方のために(私だ!)、比較的安全な場所で、その場限りのダイビ ング気分を味わせてやるぜ!というものなんです。まぁダイビングお試し版とい ったところでしょうな。
 今回の旅行で「いるもて荘」YHを選んだのも、この体験ダイビング(もち ろん普通のダイビングも)を熱心にやっているからである。料金は午前午後2回 のダイビングで16000円である。沖縄本島の方では、これくらいの値段であるか もしれないが、西表でこれは安い。だいたい1回で15000円が相場のようだ。
 前日の晩に簡単な打ち合わせがある。といっても集合時間や持ち物の確認と いった簡単なものであり、ホンマに大丈夫かなぁと思うほどあっさりしたもので あった。

 当日の朝、ちょっと緊張して集合場所に集まった。インストラクターの
(若い)(茶髪の)おねーさんが、だいたい目星をつけてマスクやらフィンや らウエットスーツやらを見つくろってくれる。体験ダイバーは立っているだけの お殿様状態である。これが普通のダイビングだと自分で用具を調達しなくてはい けないようだ。

 機材を積んで港へ向かう。YHが船を2隻持っているようで、1隻は普通の ダイビング用で、もう1隻が体験ダイビング用となっていた。
 体験ダイバーを乗せた船は、西表島の北に浮かぶバラス島に到着。

 バラス島は、サンゴの死骸である白い枝状の石が潮の流れで集まってできた 島である。 まずは島に上陸。ウエットスーツを着て、シュノーケルの練習。つ ぎにボンベを背負っての呼吸の練習。そしてようやく水中へ。
 ダイビングでは「耳抜き」という技術を習得しないと、深く潜ることはでき ない。「耳抜き」とは、ハナをかむ感じでゆっくりと耳から空気を抜いていくこ とで、これができないと水圧と体内の圧力を調節することができない。
 はじめて5mくらい潜ったとき、耳抜きに失敗、耳がキィーンとして耐えら れない感じになったので、ゆっくり浮上した。2度目からはなんということもな くできたので、慣れが必要なのだろうか。痛いのを我慢してたら耳から出血した という話も、鳩間島で一緒だった人から聞いたからなぁ。
 さて、ダイビングに必要なものは?もちろん酸素ボンベ、水中メガネ、ウェ ットスーツ、それにシュノーケルにフィンもあった方がいい。もう一つある。何 でしょう?
答え おもり です。人間ふつうにしていれば水に浮く。海ならなおさら。そこ にさらに比重の小さい酸素ボンベを背負うわけだから、なかなか沈むっていうこ とは難しいことなのだ。そこで鉛の固まりを5個も6個も(ちなみに私は8個も )腰のあたりにつける。
この量は、ちょうど水中で静止できる状態になる分だけつけるのだ。
 では、浮上したり逆に沈降したりするときはどうすればよいでしょう?
答え 肺を浮き袋にするのです。
肺に空気を入れると体は浮くし、逆に空気を吐き出せば体は沈む。このあたり 、理屈より慣れですな。慣れてくると大変おもしろいよ。

 水中では、全員ボンベのホースを加えているわけで、喋ることができない。 また水中メガネをつけているので、思った以上に視界が狭い。よって仲間に何か 伝えたいときは、レンチのようなものでボンベをたたいて合図をする。ちなみに 、水中での金属音というのは、意外なほど脳天に響く音である。

 バラス島の周囲は、浅いところにイソギンチャクの群体があり、そこを根城 に小魚が住んでいて、その魚を食べるためか、中型の魚もやってくる。イソギン チャクや魚の極彩色に、白いサンゴに反射した光があたるため、深さの割に明る い世界が広がる。
 たまにイワシの大群が周遊してくる。これを下から見上げると、一匹一匹が 光を反射してキラキラと輝いている。
 スキンダイビング(素潜りのことね)では、せいぜい十数秒が限界の世界を 、ボンベを背負い、おもりをつけるだけで何十分と水中の世界を楽しむことがで きるというのは素晴らしいですな。今回、普通の一眼レフを特殊な袋で包み、水 中に持っていったのですが、初めてでも余裕を持って水中撮影を楽しむことがで きる。皆さんにも一度ダイビングをしてみることをお奨めするぞ。


島内観光
 島内の移動は、一般の交通機関は頼りにならないと思った方がいい。
 西の集落・白浜から、東の集落・大原までの直通バスが一日に3本、途中の 船浦までが2本の計5本しかないのでは、あくせく走り回るには不向き。まぁ一 日一カ所のつもりでのーんびり廻るつもりなら[吉]。ちなみに海水浴場へはYH がマイクロバスを出してくれる。自転車は、最初にも書いたが、けっこうアップ ダウンもあるし、西端から東端まで50kmもあるしで、お奨めしないぞ。けっき ょくレンタバイク・レンタカーといったところに落ち着くだろう。レンタバイク で半日〜一日で3000円くらい、レンタカーで8000円くらいが相場か。わ たしはYHでレンタバイクを借りた(一日2400円、ガソリン別)。
 まずYHのある船浦から時計回りに東へ。水牛車で海を渡ることで有名な由 布島を見て、しばらくすると古見の集落。この先に天然記念物のサキシマスオウ ノキの群落がある。
サキシマスオウノキ群落
拝所を回り込むように進むと、群落だ。この木は、幹の根本が、何本かの平た い板状になっている。近くの川の水が上ってくるのだろう、土地はジメジメして いる。この木はこうした水位の変化する土地にあわせて幹が変化したのだろうか 。昔はこの板を使って、サバニ船の櫂や舵を作ったという。

 古見の先に大原の集落がある。ここは石垣からの船も着く、西表東部の玄関 口である。 大原をさらに南下すると南風見田の浜。

南風見田の浜
島の南の浜。亀の甲のような模様の石がある。人気の少ない遠浅の砂浜で、ゆ っくりできる。しかしちょっとリーフに近づこうとすると海草が茂っていて、足 を取られかねない。人気がない分、ちょっと怖い。波打ち際近くまでブダイのよ うな中型魚が近づいてくるのにはびっくりした。
 南風見田の浜の東には、忘勿石がある。戦時中、波照間島から強制疎開でや って来た人たちがマラリアでほぼ全滅したことの鎮魂碑だ。ちなみにこの碑と波 照間島の学童慰霊の碑は海を挟んで向かい合っているという。

 東部をざっと見て船浦に戻る。バイクのガソリンが空に近くなり、船浦に着 くまで非常に冷や冷やした。東部の古見から中央部の船浦までガソリンスタンド がなかったのだ。船浦のスタンドで補給。満タンで3リットル。ちなみに南風見 田まで往復80km。
 半周道路では、おもしろい看板がいくつかあった。
 特別天然記念物のカンムリワシやイリオモテヤマネコに引っかけて
【スピード出しすぎワシゃおカンムリ】【イリオモテヤマネコ飛び出し注意】 とか。
【スピードを出したくなる一直線】ってこれは煽っているのか?
【ポイ捨てもほどほどに】 ほどほどやったらえーねんな?

 船浦から西へ向かう。途中、星砂の浜への道を分けてしばらくすると西表最 大の川・浦内川だ。浦内川の河口にはボート乗り場(ボートといっても大きな船 だが)があり、ここから川を遡ることができる。この川は満潮時に海水が流れ込 んでくるため、川の水位が変わる。植物もそれに適応したマングローブ。終点ま での20分ほどの間、船長が、ヒルギやサキシマスオウなどの亜熱帯植物の説明を してくれる。
 終点・軍艦岩からジャングルを歩くと、日本の滝100選のひとつマリュウド の滝・カンピレーの滝に行くことができる。今回は時間が遅かったため、軍艦岩 にでんを着いて引き返してきた。

 帰り際、ボート乗り場の近くで、とても大きなトカゲを見た。
あ・あ・あ・あ‥‥カメラ‥‥
と思っているうちに藪の中に逃げ込んでしまった。おそらく日本最大のトカゲ ・キシノウエトカゲであろう。

 ボート乗り場近くの道路際には、黒真珠の博物館がある。西表島は黒真珠の メッカ。真珠業者が宣伝と販売所をかねて作った施設だが、まぁまぁ勉強になる 。入場無料だしね。
 白浜は西の果ての集落だ。半周道路もここで終わる。ちなみに終点は中学校 の正門で、先にはグランド、そして校舎、そしてジャングルとなる。
 白浜から先には船浮という集落がある。といっても道路がないので、この集 落には船でわたることになる。今回は時間がないのでパス。こんな辺鄙なトコに は十分時間をかけていくに限る。


 西表雑感
とにかく広い!見てないところもまだまだたくさんあるし、島縦断ってのも魅 力的だし。ダイビングももっとやってみたいし。カヌーもできるんだよなぁ。と いうことで西表島は活動派にはお奨めの島ですなぁ。

OH!WOO!! 1996年11月号より

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