黒島

沖縄県八重山郡竹富町   
 石垣島の南西約20kmの地点にある小さな島。ここも隆起珊瑚礁のため、平坦である。牧畜が主要な産業で、人よりも牛が10倍以上いることで有名。実際に歩いてみると、道路と集落以外はすべて牧場といった感じで、なるほどと思ってしまう。
 周囲の海域は沖縄の中でも特に珊瑚類が豊富で、またウミガメの産卵場所としても知られている。八重山海中公園研究所があり海洋生物の調査研究が行われている。 島内の交通は、徒歩、もしくはレンタサイクル。


1.黒島の海はすごい!
 先に書いたように黒島は隆起珊瑚礁から出来ている。隆起した珊瑚礁の島の周りには、また新しい珊瑚礁が発達して、島を取り囲むようになる。これがリーフである。干潮時は島を囲むリーフが海面から出てくるので、リーフに囲まれた巨大プール(礁湖)ができる。この中ならほとんど波はないし、潮に流されることもないので安心だ(と言っても4m以上の深さなので、やっぱこわい)。このプールの中の美しさときたらどうだ。今まで浦島太郎の絵本でしか見たことのなかった世界、鯛や平目は舞い踊ってないけど、透き通った水、色とりどりのサンゴ。原色の魚たち。我を忘れて泳ぎ廻った。はじめてシュノーケリングの楽しさを知った気がした。
 2時間ほどぶっ続けで泳いだ。潮がそろそろ満ちてきたので、宿に戻る。Tシャツを洗った。洗濯機は水不足のため使えないので、洗面器に水を張り、そこに洗濯石鹸を入れてゴシゴシやるのだ。これで十分だ。脱水機に掛け、部屋に服を干したら、もうすることがない。心地よい疲労感を感じて畳の上で昼寝をする。窓が海側にあるので風が入り気持ちいい。

2.島内散歩
 夕方5時になって、島内一周に出かける。日中は暑くてダメだ。5時でもまだ陽が高い。 道路の両脇は牧場で、鉄線の簡単な柵が張ってある。黒牛がこちらを眺めている。すこしでもこちらが動く気配を見せると、のそ〜っと逃げてしまう。
 牧場には、ところどころサンゴの石が積まれている。最初は牛の水場か、なにか信仰のための物かと思ったが、牧草地にするときに、掘り出された不要なサンゴ石を積み上げたあるだけだと分かった。この景色は黒島の至る所で見られる。黒島らしい景色だと思う。東筋のシーサー
 さて黒島は人口200人の小さな島ながら、集落が4つある。島の中心近くにある「東筋 」が最も大きく、郵便局や診療所・公民館もある。そして島で唯一の雑貨屋「たま商店」もある。民宿は、島の南西の端「仲本」集落と北の端の集落「保里」にあり、港は保里にある。桟橋があるのが「伊古」で、計4つの集落がほぼ正方形を形作るように散在し、それぞれの集落間は歩いて20分ほどである。そしてその間はほとんど牧場である。小中学校は、どの集落にもない。どの集落からも遠くならないように4つの集落の中間地点にあるのだ。つまり正方形の対角線が交わった地点に学校がある。
 私はまず、民宿のある仲本から対角線を通り学校へ。学校の周りは道路がロータリーのようになっており、4つの集落へ道が伸びている。ここから東筋へ向かう。この道は日本100選に選ばれた道だそうだ。期待して歩いたが、牧場が広がるだけで、別に‥‥。東筋に近づいてようやく沖縄らしい赤瓦の民家が建ち並ぶ。屋根にはシーサーが睨みをきかせ、屋根の下には雨水受けの大きな瓶がある。サンゴの石垣をハイビスカスやアラマンダ・ブーゲンビリアが飾る。狭い石垣のあいだを写真を撮って廻る。
 たま商店で明日の昼食になる予定のパンを買い、ジュースを飲んで、北へ向かう。伊古は少し寂れている感じ。桟橋もあまり使っていないのか、寂寥感が漂う。港のある保里へ向かう。途中クイナ?が道を横切ったり、放し飼いの牛が道路に出ていたりでおもしろい。保里には港があり、喫茶店もある。保里から少し歩くと牛の選別場がある。2月に1回セリが行われるそうだ。
 歩き出して2時間半、ちょうど陽が暮れた頃、民宿に戻る。夕食の時間だ。

子牛とハイビスカス

3.民宿「くろしま」は
 小学生の子どもを持つ夫婦が経営している。シャワーの設備が完璧なことには驚いた。シャワー室だけでも5つくらいあったような。店にはシュノーケルやダイビングのレンタルもある。また船も持っているので、ダイビングポイントや離島へのツァーも行っている。よって客はダイバーが多い。多客時は相部屋になるそうだが、8月も20日をすぎると客が減るそうで(この時期は台風がよく来るからね)、私は6畳部屋を一人で使った。比較的新しい民宿なので部屋はきれいである。宿泊料は4500円で2食付きである。ビールやジュースなどは冷蔵庫に入っているものを勝手に出して飲む。そして自分でノートに記帳するという自己申告制度を取っている。レンタサイクルも洗濯機の洗剤もすべてそうである。

4.レンタサイクルで島内一周
 2日目、ゆっくり朝飯を食って、しばらく本を読んで、疲れたら寝て、と、ごろごろした後、民宿の自転車を借りて、島の中を廻った。
 海中公園研究所(見学料100円)では、ウミガメの赤ちゃんを見た。また海中の危険な生物についてとサンゴについても学習した。サンゴの色って中に住み着いている共生植物の色なんやてね。だからサンゴは死ぬと中の植物も死んじゃうから、白色になると。知ってた?
 保里の近くの西の浜海水浴場は、黒島唯一の砂浜だ。この浜にウミガメが産卵に来るのだと言う。
 島の中心へむかう。学校までは上り坂。いくら平坦な島とはいえ、上り坂だってあるのだ。登り切ったところに水道記念碑がある。学校のロータリーを廻って東筋へ。たま商店でジュースを飲み、今度は南の端・燈台へ。燈台までの道は未舗装で幅も2mくらい。周りは牧場。直射日光をまともに受けるので暑い、が木陰を通るとひんやりとする。燈台の周りは何もない。海を臨むとまばゆいばかり。波照間島はどれかいなぁと探したが分からない。

5.プール
 昼過ぎから、また仲本海岸へ行く。展望台のベンチの腰かけ、海からの風を受け、リーフと海と新城島や西表島の美しい景色を眺めながら昼食とする。メニューはティナ夫妻からもらったカチカチのフランスパンと昨日買ったパンと今日買った「パパイヤジュース」だ。フランスパンはあまりに堅いのでジュースに浸けて食う。貧相な食事だが、気分は最高だ。
 今回は海パンの中にパンを忍ばせて泳ぐ。ここのリーフでは魚の餌付けを行っているポイントがあり、そのあたりでは熱帯魚が群をなして近寄ってくる。そこでパンでも出そうものなら、そら凄い。ゆっくり泳いでいた魚たちが急に右から左から凄い勢いで寄ってきてはパンを奪っていく。 今回の旅行では水中カメラを持ってきたので、サンゴや魚たちを撮りまくった。珊瑚の色は青・赤・黄・緑・紫とカラフルだ。形も枝状・団子状・テーブル状など様々。浅い海底にはナマコやヒトデが横たわっていたりする。真っ青な小魚・ルリスズメは近寄ると必ず珊瑚の陰に隠れるし、ゴンズイは日焼けでむけた皮膚を突っつきにやって来る。ずっと岩陰に隠れている大きな魚もいるし、小鯛は逆に集団で寄ってくる。テリトリーが荒らされたと思ってか攻撃してくる魚もいる。魚によって色々な習性があるのだなぁと思った。
 シュノーケリングも慣れてくると、潜ったり、歩くようにして泳いだり、珊瑚と珊瑚の間を縫うようにして泳いだり、後ろ向きに、はたまた回転しながら泳いだり。実に自由で楽しい。 三日目は新城島へ行ったが、帰ってきてからまたプールへ出かけた。
 今回の旅行で一番の収穫は、海中散歩の楽しさを知ったことにあると言い切ろう。

6.新城島からの帰り
 声を出さんばかりに驚いた。 船が黒島に近づくにつれて、水の色が青から限りなく空色に近づいていくのだ。水深が五mくらししかないので、太陽光線の多くが跳ね返ってくるためだろうか。実に美しい。絵の具を落としたような鮮やかな空色だが、間違いなく透明である。底が見える。底が見えるくらい透明なのに鮮やかな空色‥‥空よりも明るい空色!他の七人も驚嘆の声を上げる。民宿の親父さんも誇らしそうな表情で「写真撮るには最高でしょ」と言う。まさにその通り。綺麗な写真が撮れました。


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