富士登山6 下山

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15:20 下山開始(標高3715m)

ざくざくとブルドーザー道兼用の下山道を歩く。私は前回と同じく右膝が痛い。また下山は足先に体重がかかるため、皆同じようにつま先が痛いようである。昨年考案?した後ろ歩きを勧める。近くを歩いていた登山グループのリーダー格の人も「これが意外と楽なんですよ」と話しながら後ろ歩きをしていたから、そんなにイリーガルな歩き方でもないのかもしれん。

(下中写真)ピンク色のウェアが下娘、登っているように見えるが、後ろ向きに降りている。写真を撮っている私も後ろ向きである。1時間足らずで須走・吉田ルートの分岐点(標高3270m)、八合目に到着。

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八合目以降も基本は幅の広いブルドーザー道の下山道である。どんどん高度が下がり、太陽が頂上側に隠れていく。

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17:20 七合目(標高2920m)

ここから砂走り下山道が始まる。走コースの楽しみの一つだったはずなのだが、期待が大きすぎた分、失望した。失望した理由は、砂の中に岩が多く含まれていて安心して走れないこと、コースの幅が二人が横になれる程度しかないことだ。これではスピードが出すぎたときに、けがをしないか心配で思いっきり走ることはできない。さらに前日雨が降ったことで砂の抵抗も大きいことも原因であろう、真剣に飛ぶように体重を預けるとブレーキが掛かり、つま先や膝に大きな負担がかかる。この砂走り区間、皆、思うように下れず、後ろ歩きを併用して普通の歩きで下ることになった。けっきょく踏破するのに1時間20分もかかった。ガイドブックの標準タイムは1時間15分とあるので、まぁ普通なのだろうが、つま先の痛さに日暮れへの焦りも加わりけっこう長く感じた。コースタイムでは50分と書いてあるが、これは本当に条件が良く走ることができた場合の時間のようだ。

御殿場ルートの大砂走りと比べると、同じ「砂走り」と呼ぶのが失礼なくらいの違いでたいへん残念であった。

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18:40 砂払い五合目(標高2300m)到着201307XZ-275201307XZ-274この山小屋は18:00までで、到着したときは人の気配すらなかった。完全制覇記念焼印の文字がむなしい。

さて、ここで試練というか、準備ミスからたいへんな事態になってしまった。はじめに書いた準備物の項で「たいへんなものがチェックされていない」と書いた。まもなく午後7時、もうおわかりであろう。懐中電灯を持ってき忘れてしまったのである。私の分のヘッドライト一つしか無い状態で夕暮れを迎えてしまったのだ。

陽はとうに富士山の向こう側である。空はまだ明るいが、樹林の中に入ってしまうと薄暗い。富士山の登山道で唯一の樹林区間がある須走ルートだけに、日暮れ対応は必須であったのに忘れてしまい、さらにその時間帯にまで下山が延びてしまった。たいへん危険な状態である。

砂払い五合目のあと、しばらくはブルドーザー道を下山できる。このまま下山できないものかと淡い期待を抱いていたのだが、残念ながら途中でブル道に通行止めのロープがかかり、樹林コースに誘導する標識があった。

安全のことを第一に考えるなら、このままブル道を下山するのがベストである。だが調査不足でこのブル道が登山口近くにつながっているという確信が持てなかった。これまた失敗なのだが、GPS機能のあるタブレットを持っていたのだが、電池が切れていると思い込んでいてその場で確認することもしなかった。コースタイムではおそらく登山口まであと30分、空は明るいし、まだ道も目視できる。だいぶ逡巡したが、後にも下山者がいることを頼りに(後から抜かれてしまうのだが)、コース通り樹林帯の下山道を行くことにした。

201307XZ-278写真はブル道:空は明るいが地面はすでに暗い

失敗であった。樹林帯に入って10分も歩かないうちに本当の日暮れ。完全に闇の森の中となった。

一つのヘッドライトを頼りに、私が5m進んで、後ろの家族の足もとを照らし、追いついたら、また5m進み…の繰り返しとなった。木の根のでこぼこ・岩場の高低差もあり、困難を極めた。そんな中で家族の誰もパニックになるでなく、懐中電灯を忘れた私を非難するでもなく、木の根や浮き石の情報を伝達するなど協力して下山できた。塞翁が馬と言うが、普段の生活では感じることの少ない家族の絆というものを確認する機会となって良かったと思う。下っていく中で、「下山道」と書かれた小さな標識がたくさんあったことと、登山者や自衛隊の隊員(訓練なのだろうか)の集団と何度もすれ違ったことは心強かった。少なくとも道は外していない。いずれたどり着くことができるという安心感である。それと登山口に車が待っていることも心強かった。もし麓からシャトルバスで上がってきていたら、バスの最終時刻も気になっていたはずである。ということで牛歩の歩みではあるが、着実に安全に下山することを心がけた。

そんな状態で30分は歩いたであろうか、ようやく視界が若干開け、古御岳神社まで帰ってきた。やれやれである。行きと同様に社殿の扉は閉まっていたが、無事に帰って来られたことに感謝して手を合わせた。

その後は薄暗い中、登山口へ続く幅の広い参道を家族4人が横になって、小さな段差を声を合わせて軽快に降りていった。

19:45 須走ルート五合目(標高1980m)着

お土産屋さんで椎茸茶をいただいて一息つく。

無事生還できたことがもっとも嬉しく、家族全員で富士山に登頂して、お鉢巡りもしてきたってことを忘れるくらいであった。

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