2020年7月1日より、小売店でのレジ袋の有料化が始まった。私もマイバッグを用意したりhttps://www.ma-2.com/blog1/?p=5848、以前に万代スーパーで購入(有料借り受け)した買い物かごを使うことで、脱レジ袋生活を送っている。買い物かごは会計後の袋詰め作業が無くなったので、かえって便利になったようにすら感じる。ただ購入量が買い物かご1つ分に制限されることや、買い物中ずっと空の買い物かごを携行する必要があるなど、システム的にはもうちょっと何とかならんのかと思う。
さて、表題の件で、私はレジ袋の有料化は反対である。
[1]小売店がレジ袋を高額で販売していること
[2]有料化の目的とされる環境への貢献があまり効果が無いと思うこと
[3]レジ袋は2次使用されており、その代わりはけっきょく石油製品であるということ
まず[1]であるが、これまでも少数であるが、商品価格をギリギリまで下げるためにレジ袋が有料の店があった。レジ袋の代わりに店は持ち帰り用に商品の段ボール箱を利用できるようにしていた。これはお互いに納得のできるサービスであり、よくできたエコシステムだと思う。有料でない多くの店は、大した原価でもないレジ袋代は、利用者の利便性のためのサービスとして、あるいは価格に転嫁することで無料としてきた。それが法律で有料化するということになった途端、1枚5円程度の代金を取るようになった。しかもこの代金の使い道は、店が決めて良いということになっている(下の文章参照)。
…プラスチック製買物袋を有料化することを通じて、消費者がその必要性を吟味する機会を提供し、ひいてはマイバッグを携行する習慣が浸透するなどライフスタイル変革を促すことが本制度の目的であり、その売上の使途については、事業者が自ら判断するもの… 環境省『プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン』より
つまり生活様式の変容を進めるための施策を利用する形で儲けても良いということだ。また右のグラフは、レジ袋は2円だろうと5円だろうと、買う人は買うし、買わない人は買わないという統計である(前出・環境省の資料より)。
本当の環境に配慮するためだけの有料化なら、原価(+手間賃)だけでよいのである。5円という価格設定は、懲罰的であり、店側の儲け主義が透けて見えるのである。もちろん使途が店にゆだねられているのだから、儲け分を環境のために寄付するとかすればよいのだが。もっと言うなら儲けた額と同額を店が追加して寄付すれば素敵な話だとは思うのだが、そんな話は寡聞にして知らない。
次に[2]であるが、本質的な問題はこちらである。
数年前から海洋性プラスチックの問題がセンセーショナルに取り上げられており、プラ削減に向けての世間の合意形成が計られていたように思う。
しかし海洋性プラスチックと呼ばれるモノのほとんどは、ペットボトルやポリ容器であり、レジ袋はほぼ無関係である。
次に石油の使用抑制という点だが、レジ袋の原料であるポリエチレンは、原油から石油を精製する際に生じるナフサという気体から作られるものであり、レジ袋の消費を抑えれば原油の使用が減るというものでは無い。もちろん燃料としてのガソリンや原料としての石油製品全体の消費も含めて、石油資源全体の使用抑制というグローバルな目標はあるにしても、切れ端とも言えるレジ袋だけを狙い撃ちすることには意味が無いように感じる。
最後に[3]である。これまでレジ袋は家庭内で、モノを小分けする際やゴミを小集めすることに役立ってきた。これからはこれが無くなる。何がそれに取って変わるのか。一部は布や紙かも知れないが、多くはプラスチック製品となるであろう。消費者にとってはタダ貰いしていたものが代金を支払って買うことになり、グローバルで考えれば消費がレジ袋から他のプラスチックに置き換わっただけである。
さらに私の愛読書『偽善エコロジー』によれば、レジ袋などの可燃性のゴミが少なくなると、ゴミ焼却の際に燃えにくくなるため燃料代がかさんだり、燃えやすくするために石油が消費されるという。これでは本末転倒ではないのか。
ここまで書いてきたことをまとめると、レジ袋有料化は、エコノミーでもエコロジーでもないということだ。この施策の本質は石油使用削減の意識改善が目的である。そのために庶民にとって身近な題材であるレジ袋が生け贄とされた。しかしこの施策、正解か?私には経済的な痛みと不便さを伴う悪政としか思えない。海洋性プラスチックの問題で人々の道徳心を人質にして反論させないようなコンセンサス形成の過程には気味悪さすら感じる。
当然ながら石油は限りある資源である。どんなに技術が進歩してもいずれは無くなる資源である。だから石油資源保護や環境問題対策として、その意識改革を図ることは、間違っていない。だが、その矛先がレジ袋?手法が有料化?こんなことで本当にその目的は達成されるのか?ということなのである。
とにかくもっとも早急に手を付けるべきは、石油を燃料としての使用することに制限を設けることである。石油は燃やしてしまえば水と二酸化炭素、窒素酸化物などとなり、大気中へ拡散する。当然リサイクルは不可能である。そして生成される二酸化炭素や各種酸化物、これらが環境問題の一因となっている。
本丸である原油の燃料使用を抑えることは当然として、化学繊維やプラスチックなど原料使用も抑えないと意味が無い。幸いにも石油製品の多くは再利用が可能である。レジ袋を含めた石油製品のリサイクルを庶民が喜んでできるような施策、たとえばリサイクルに出したプラスチック製品の重量によってペイバックするなどの方が良いのではないか。レジ袋にしたって、不使用の際のポイントバックに補助を付ければ、それで事足りるように思える。環境税の一部が善良な庶民への還元で良いではないか。いやむしろ環境税を上げてでもペイバックがある方が、庶民的には積極的にリサイクルに関われるようにすら思えるのだ。
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