演示実験に使うてんびんが学校に無いので作ってみた。数学の先生が「等式の性質」を説明するためにてんびんを自作していたので、正直負けてはおれんという気持ちもあった。
教科を越えてこういう話ができるのも,お互いどんな授業をしているのかわかるのも、小さい学校のメリットだなぁと思う。まぁその前に人間関係が良くないといかんわけで、そこは常に腐心しているところである。
さて、金曜の夜、閉店間際のホームセンターに滑り込み、まず皿を探す。これはバーベキュー用のアルミ皿、と見当をつけていたので、すぐに見つかる。
次にてんびんの主体をどうするか、最初はプラスチックか木の棒を考えていたのだが、皿を支える針金を探しているうちに、ねじの切ってあるステンレス棒を発見、ナットで挟めばおもりをつるす位置を自由に変えられ、かつ固定できるてんびんになると思いつき、完成への構想ができあがった。
アルミ皿2枚あたり50円、針金100円、ねじ棒100円、ナット60円、金具60円
合計370円也。安い。作成も下娘に手伝ってもらい、10分程度。これで効果的な授業ができる。
さっそく来週の化学変化にかかわる質量変化の導入に使用予定。
具体的には、紙やろうそくを燃やすと軽くなるのに、鉄を燃やすと重くなるという現象を演示実験する。生活体験的にはモノが燃えると軽くなるというのが当たり前、しかしそれは気体の酸化物が生じるために質量の計測できなくなっているだけで、実際には酸素と結合した分だけ重くなっている。紙やろうそくの後に鉄(スチールウール)を燃やし重くなるという演示実験はそれを目の当たりにしてくれる。
概念を獲得してしまえば当たり前のことだと思うが、原子の質量の概念と、化学変化で原子の組み合わせに変化が生じること、気体が生じる場合には質量計算に入ってこなくなることなど、けっこうな知識の組み合わせが必要だ。そして生活体験で獲得している概念というのは、特別なルール下での現象だったりする。だから鉄が燃えると重くなるというコトの方が「意外」な事実として驚きを与え(これを概念砕きと言う)、知的好奇心を湧き起こさせるのだ。
あれ?おかしいな?という表情、その後に行う生徒実験で確かに重くなるという事実、そして獲得した知識と今までの生活概念とのすりあわせなどができるようになる。その変容の過程を、空気感というか、なんとなくテレパシーのように感じる。思い込みにすぎないかもしれないが、そこが楽しくて理科の実験っていいなぁと思う。理科の教員としての醍醐味である。
[ろうそく]の場合…燃えていくと軽くなっていく。
[スチールウール]の場合…燃やすと重くなる。